格闘技のプロ興業に付き物なのが、試合前の記者会見などで行われる選手によるトラッシュトークです。
トラッシュトークとは、相手を挑発したり侮蔑する言動のことを指しており、一般的にはそれで相手の感情を揺さぶったり気を散らせて、自分の優位に事を運ぼうとする心理的な戦略の1つとされています。
また、「自分達の試合に多くの人が興味を持ってもらえるように」や「少しでも盛り上がるように」という意図であえて行っている場合もあります。
トラッシュトークは基本的に汚い言葉のオンパレードになるので、これに嫌悪感を示すファンも多く、過激なトラッシュトークを行う選手(トラッシュトーカーと呼ばれています)には多数のアンチがつくこともあります。
トラッシュトークの是非や必要・不要の考え方は人それぞれであり議論すること自体がナンセンスだと思うので、今回はトラッシュトークをすることによるメリットとデメリットを客観的に見ていきます。
トラッシュトークのメリット
- 試合への期待感が高まる
格闘技は喧嘩ではありませんが、人間同士が殴り合った末にどんな結果になるんだろうという緊張と興奮は、何だかんだでみんな持っているものです。
そこに「3R(ラウンド)も必要ない」とか「ボコボコにするだけ」などの発言があると、観客としては『派手なKO劇が見れるかも!』という期待が増します。
期待が増せば自然と試合も盛り上がりますから、選手もモチベーションが上がりますよね。
- 注目が集まる
トラッシュトークは汚い言葉の応酬となることが多いのですが、強気な発言がどんどん飛び出してくるので「それだけ言うのなら、見せてもらおうじゃないか」という風にファンとアンチ双方の注目を集めます。
注目が集まれば良くも悪くもその選手の知名度は上がりますし、お金を払って試合を観戦しようという人も増えます。
プロの格闘技はお客さんを呼んでお金を落としてもらってナンボなので、これは主催側にとっても嬉しいことです。
- 選手自身へのプレッシャーになる
トラッシュトークによる強気な発言は、つまり『大口を叩いている状態』です。
試合に勝利した後ならまだしも、試合前では「口だけなら誰でも言えるわ」と周囲は思うので、自分で口に出した以上はそれに見合う試合をしなければなりません。
以前こちらの記事でも言及したのですが、どんな選手であれ何だかんだで試合は怖いものです。
トラッシュトークで「もう後戻り出来ない」というプレッシャーをあえて自分にかけて、恐怖心を振り払おうとする心理もあると僕は思っています。
トラッシュトークのデメリット
- 今後期待されなくなる可能性がある
トラッシュトークによって観客の期待が高まっているということは、その期待を下回れば「期待外れ」となり選手には様々な批判が寄せられることになります。
「あれだけ言っといてつまらない試合しか出来ない」とか「所詮口だけ」と認識され、その後に選手がまた同じようにトラッシュトークを繰り広げても「また何か言ってるよ」と思われるだけで期待されなくなる可能性があるのです。
選手として観客から期待されなくなるというのは致命的です。
- 負けたらどんな批判をされても文句は言えない
トラッシュトークをする以上、周囲には当然『勝つこと』を求められます。
そもそも格闘技は『勝者こそが全て』ではありますが、トラッシュトークによる強気な発言は「強者こそが許されるもの」という認識がされているので、それをしたにも関わらず試合に負ければ「弱いくせによくあんなこと言えてたな」となります。
その状態で批判に対してどれだけ反論しても「負け犬の遠吠え」となるため、どれも甘んじて受け入れる覚悟が必要となります。
※トラッシュトークはあくまでパフォーマンスのひとつで真に受けるものでもないと個人的には思っていますが、そうではない人もいます。
- 格闘技自体に悪い印象を持たれる可能性がある
トラッシュトークは汚い言葉や侮蔑の言葉が並ぶため、何も知らない人がこれだけ聞くと「格闘技って下品だな」と思われることがあります。
もともと格闘技はその競技柄、野蛮なイメージを持っている人も少なくないため、そこに加えてトラッシュトークがあると格闘技自体に悪印象を与えてしまう可能性があります。
もちろん格闘技に興味を持ってもらえる可能性もありますが、諸刃の剣な感じはあります。
トラッシュトークを含めて格闘技を楽しもう
トラッシュトークをする選手の思惑はその選手自身にしか分かりません。
しかしそれに対してどのような反応をしたとしても、反応をしている時点で興味・関心を持っていることに変わりはありません。
何の展開もない静かな試合だけではつまらないことも事実なので、その意味でトラッシュトークはある程度の効果を出しているのは確かではないかと思います。
思うことは色々あるかもしれませんが、トラッシュトークを含めて楽しんだもの勝ちではないでしょうか。
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